副鼻腔炎は、副鼻腔が炎症を起こした状態で、多くはアレルギーまたは感染が原因で起こります。
副鼻腔炎は最もよくみられる病気の1つで、毎年約1000万〜1500万人が発症します。副鼻腔炎は、上顎洞(じょうがくどう)、篩骨洞(しこつどう)、前頭洞、蝶形骨洞(ちょうけいこつどう)という4種類の副鼻腔のどこにでも起こります。多くは鼻炎を併発しているため、鼻副鼻腔炎と呼ぶ場合もあります。短期間に推移する急性副鼻腔炎と、長期にわたる慢性副鼻腔炎があります。
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急性副鼻腔炎: 急性副鼻腔炎はさまざまな細菌によって引き起こされるもので、副鼻腔の開口部に閉塞が生じた後によく発症します。閉塞は主に、かぜなど上気道のウイルス感染が原因で起こります。かぜをひくと鼻腔の粘膜が腫れて、副鼻腔の開口部がふさがりやすくなります。閉塞を起こした副鼻腔では、空洞内の空気が血流に吸収されると内部の圧力が低下します。このために痛みが生じ、副鼻腔内に分泌液がたまります。たまった液は細菌の温床となり、細菌と闘うために白血球やさらに多くの分泌液が副鼻腔に集まります。この流入により空洞内の圧力がさらに上昇し、痛みが増します。
アレルギーによる粘膜の腫れも、副鼻腔の開口部がふさがる原因となります。また、鼻中隔弯曲症をもつ人では、副鼻腔の閉塞をさらに起こしやすくなります。
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慢性副鼻腔炎: 副鼻腔炎の症状が8〜12週間以上続く場合を慢性副鼻腔炎といいます。慢性副鼻腔炎の原因は明らかではありませんが、ウイルスの感染、重度のアレルギー、環境汚染物質の影響などに引き続いて起こります。家族が同じ症状をもつ場合も多く、遺伝的素因も発症にかかわる要因の1つとみられます。細菌や真菌による感染症にかかっている人では、炎症はかなりひどくなります。ときに、上の歯にできた膿瘍(のうよう)がその上に位置する副鼻腔に広がり、上顎洞の慢性副鼻腔炎を引き起こすことがあります。
症状と診断
急性副鼻腔炎では、炎症を起こした副鼻腔に疼痛、圧痛、腫れがみられます。上顎洞の炎症は、眼の下の部分の痛み、歯痛、頭痛を引き起こします。前頭洞の炎症では額に痛みが起こり、篩骨洞の炎症では眼の奥や両眼の間が痛み、頭が割れるような激しい痛みが額に起こります。蝶形骨洞の炎症による痛みは、位置をはっきりと特定できませんが、頭の前部や後部の痛みとして感じられます。
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急性副鼻腔炎では、鼻から黄色や緑色の膿が出ることがあります。発熱や悪寒が起こることもありますが、これらの症状がみられる場合は、炎症が副鼻腔以外の部位にも広がっている可能性があります。視覚の異常や眼の周囲の腫れはきわめて危険な状態で、数分から数時間以内に失明するおそれがあります。眼にこうした変化が現れたときは、ただちに医師の診察を受ける必要があります。
慢性副鼻腔炎の症状は通常、急性副鼻腔炎に比べてかなり軽く、痛みも急性の場合ほどみられません。鼻づまり、鼻の充血、鼻汁がのどに回る後鼻漏などがよくみられる症状です。黄色や緑色をした鼻汁が出たり、嗅覚が低下することもあり、全身のけん怠感が生じることもあります。
こうした典型的な症状があれば副鼻腔炎と診断されますが、ときにX線検査も行われます。X線画像では副鼻腔の空洞内にたまった分泌液が見られますが、炎症の範囲や程度を調べるにはCT検査の方が優れています。上顎洞の副鼻腔炎の場合は、歯の膿瘍の有無を調べるため、歯のX線検査も行われます。鼻に内視鏡を挿入して副鼻腔の開口部を観察し、分泌液を採取して培養することもあります。これは局所麻酔を必要とする処置ですが、病院や診療所の外来で実施できます。
治療
急性副鼻腔炎の治療は、副鼻腔にたまった分泌液の排出と、感染の治癒を主眼に行われます。血管を収縮させるフェニレフリンなどのスプレー式点鼻薬は、短期間に限って使用します。同様の作用をもつプソイドエフェドリンなどの内服薬は、それほど効果がありません。急性・慢性いずれの場合でも、副鼻腔炎にはアモキシシリンやトリメトプリム‐スルファメトキサゾールなどの抗生物質を用いますが、慢性の場合は長期間の服用が必要です。ステロイドのスプレー式点鼻薬や錠剤は粘膜の炎症を抑える効果があります。明らかなアレルギー症状がみられる場合は、抗ヒスタミン薬も症状の緩和に有効です。食塩水による鼻洗浄は、副鼻腔を清潔にして湿った状態に保つのに役立ちます。抗生物質の効果がみられない場合は� ��術を行い、副鼻腔内を洗浄して洗浄液の培養検査を行ったり、副鼻腔からの排膿を改善することによって、炎症を抑えます。
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