腸チフスはグラム陰性桿菌のサルモネラ属腸チフス菌によって起こり、長く続く熱、腹痛、発疹が特徴です。
腸チフス菌は感染者の便と尿に排出されるので、用便後の手洗いが不十分な場合に、菌が食べものや飲みものに広がります。下水処理施設に不備があると、水の供給源が汚染されます。ハエがたかると、便から直接食べものに菌が広がります。まれに、病院に勤務する人が感染患者の寝具や包帯などを不注意に扱って腸チフスにかかることもあります。
感染しても治療を受けなかった人の約3%が、1年たっても便に菌を出し続けます。こうした保菌者の中には、症状が出たことがない人もいます。現在米国に約2000人いると推定される保菌者は、ほとんどが胆嚢(たんのう)に慢性の病気をもつ高齢の女性です。米国では過去に、1人の女性料理人から大勢の人に腸チフスが伝染した有名な事件も知られています。
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チフス菌はまず消化管に入り、そこから血流へ入ります。次に小腸と大腸の炎症を起こします。重症感染症は命にかかわることがあり、小腸に潰瘍ができる場合があります。それらの潰瘍は出血したり、ときどき腸の壁に穴を開けたりします。
症状と診断
症状は通常、感染してから8〜14日後に徐々に出てきます。まず、食欲不振、発熱、頭痛、関節痛、のどの痛み、便秘や下痢、腹痛、腹部を押すと痛むなどの症状が現れます。耳障りな空せきや鼻血もみられます。
病気が進むと、高熱が続き、せん妄が現れます。熱が下がらず、脈が遅くなり、極度の消耗感に襲われます。下痢が続き、中には便秘になる場合もあります。感染者の約10%で、2週目に小さなピンク色の斑点(バラ疹)の集まりが胸や腹部に現れ、2〜5日続きます。2週間たったころから、3〜5%の例で小腸に出血が起こり、穿孔(せんこう)を起こすこともあります。
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肺炎が2〜3週目から起こることがありますが、主に肺炎球菌感染症によるもので、チフス菌自体が起こす場合もあります。胆嚢と肝臓の感染症も起こることがあります。血液の感染である菌血症になると、骨の感染症(骨髄炎)、心臓弁の感染症(心内膜炎)、腎臓の感染症(糸球体腎炎)、尿路や生殖器の感染症、脳と脊髄を包む膜の感染症(髄膜炎)が起こることがあります。筋肉の感染症では膿のかたまり(膿瘍)ができることがあります。
病気の経過や症状から腸チフスと考えられても、血液、便、尿、その他の体液や組織の培養検査で菌を同定することによって診断を確定しなければなりません。
予防と治療
腸チフスがよく発生する地域を旅行する場合は、生野菜、火が通っていない食べもの、冷蔵保存していない食品は避けるべきです。十分に火が通った料理、びんに入った炭酸飲料、皮をむいて食べるものは概して安全です。水の安全が確かでない限り、飲み水や歯を磨く水は、煮沸するか塩素消毒する必要があります。
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腸チフスのワクチンは、口から飲むものと注射するものの両方がありますが、予防効果は限られています。菌と接触があった場合や、この菌の研究者、流行地域へ旅行する人など、菌と接触するリスクが高い人のみに接種されています。
腸チフスは、抗生物質ですみやかに治療すれば、回復に数カ月かかることはあっても、99%以上の人が回復します。世界中でクロラムフェニコールが使用されていますが、耐性菌が増えてきていることから、トリメトプリム‐スルファメトキサゾール(ST合剤)やシプロフロキサシンなど別の抗生物質を使う必要も出てきています。せん妄、昏睡、ショックなどがある場合は、脳の炎症を抑えるためにステロイド薬を投与します。典型的には、死亡するのは、栄養失調の人、乳幼児、高齢者です。昏迷、昏睡、ショックは重症の徴候で、経過の見通し(予後)も良くありません。
一般に、腸チフスは3〜4週間で回復します。治療を受けないと10〜30%が死亡します。治療を受けなかった場合、約10%の人が2週間後に最初の症状と同じ症状を繰り返します。理由は不明ですが、抗生物質で治療を受けている場合、再発率が15〜20%に上がります。再発時に抗生物質を使うと、初回に比べて熱は早く引きますが、また再発することがあります。
再発の場合は、そのたびごとに初回と同じように治療しますが、抗生物質の使用は5日間のみとします。症状はなくても便から菌が検出される保菌者の場合は、地域の保健所に届け出ることが義務づけられており、食品関係の仕事につくことは禁止されます。保菌者の場合も、抗生物質で4〜6週間治療すれば、多くの人において菌は根絶されます。
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